市販薬を12,000円以上購入すれば税金が還付になる?~新・医療費控除とマイナンバー~

 

11月も終わりに近づくこの時期になると、私たち税理士業界は年末調整の準備で忙しくなってきます。
毎年のことではあるのですが、生命保険料控除や配偶者控除などについていろいろと説明をしなければなりません。

その際によく聞かれるのが「医療費は年末調整で申告するんですか?」というお問合せ。
医療費の金額によって控除を受ける医療費控除は年末調整ではできません。
翌年に確定申告をしていただく必要があります。

この医療費控除と言う制度ですが、政府が新しい控除制度を検討しているようです。

こちらについては制度として新しい内容がスタートしました。
具体的な新・医療費控除「セルフメディケーション税制」についてはこちらのページへ!
10万円以上でなくても市販薬なら医療費控除が受けられる!~新しい特例「セルフメディケーション税制」~

 

新しい医療費控除制度

2015年11月の日本経済新聞にこのような記事が載っていました。

【市販薬購入で所得税を安く 1万2000円以上で控除可能】

厚生労働省と財務省は市販薬を一定額以上買うと所得税を減らすことができる制度を新たに設ける方針だ。
市販薬の代金を課税所得から差し引く仕組みで、早ければ2016年から実施する。
家族合わせて市販薬に年1万円を超える出費をした場合、1万2000円を超える部分を課税所得から差し引く案を軸に検討する。
軽い症状は病院に行かずに治してもらうようにすることで、医療費の削減につなげる。
(2015年11月20日 日本経済新聞より)

現在でも病院で治療を受けたり市販薬を購入した場合に、治療費に対する支出金額が年間で10万円を超えた場合に所得税などが減税される「医療費控除」と言う制度があります。
(一定の所得以下の場合には10万円を超えなくても控除できる場合があります)

この医療費控除の制度を利用して、毎年のように確定申告されている方も少なくありません。
特にお年寄りの方などは、病院へ通院されている方も多いので年間の支出金額も多くなってしまうでしょう。

ただそうは言っても、相当な頻度で病院へ行ったりしなければなかなか10万円を超えることはありません。
歯のインプラントやレーシック手術など、保険がきかない自由診療で高額な医療費を支払えば10万円は軽く超えるかもしれませんが、一回の診療で1,000円程度の診療代で10万円超えるには、3日に1回くらい病院に通うようです。

医療費控除は生計を同じくする家族全体の医療費を合算することが出来るので、大家族であれば超えることも難しくないでしょう。
ただ最近は核家族化が進んでいますので、同一生計の人数も少ない。
合算してもそんなに多くならないのが現状です。

医療費控除は所得控除

また、医療費控除は「所得控除」という税金の制度。

10万円超えたら超えた分だけ戻ってくると勘違いしている人もいますが、実際には10万円を越えた分が「所得から控除される」制度です。

例えば所得税の税率が10%の人が年間で12万円の医療費を使ったとすれば、戻ってくる税金は

(120,000-100,000)×10%=2,000円

という計算になります。戻ってくるのは20,000円ではなく2,000円です。

それに対して今回の記事にあがった「新・医療費控除」の制度はどのような案なのでしょうか。

記事を簡単にまとめると「薬局などで購入した市販薬の購入金額が、年間1万2000円を超えていたら超えた分を所得控除していいよ」という内容です。

つまり先ほどの計算例でいうと、病院に行かないで市販薬に12万円使ったとすれば

(120,000-12,000)×10%=10,800円

という計算になります。

10万円というのはなかなか高いハードルでしたが、1万円ちょっととなれば多くの方が対象となるでしょう。
政府も対象世帯は1千万円世帯を見込んでいるそうです。

政府の思惑はマイナンバー?

それでは、なぜ政府はこのような制度を導入するのでしょうか?

① 社会保障費を削減したいから

国の予算のうち大きな部分を占めているのが、年金・医療の「社会保障費」です。
病院での治療や処方されるクスリに対して使われている予算は莫大な金額です。

国としては何としてもこの医療費の部分を削減したい。
そのために軽度な病気やケガの場合には、病院には行かないで市販の薬を使って欲しいのです。

病院で処方される薬は健康保険などが適用されます。
同じ効用の薬であっても、病院で処方されれば患者さんの負担は少なくて済みます。
患者の負担は少なくなりますが、逆に健康保険など国としての負担は増えてしまいます。

市販薬であれば健康保険などは適用されないので国の負担は減ります。
患者さんもいったんは全額自分のお金で薬を買わなければならないので、必要のない薬を買わなくなったり、進んでジェネリックなどの安い薬を選ぶようになるでしょう。

国家的に医療費を削減することにつながることを目的にしています。

② 病院数の削減

現在の日本の医療体制は万全とは言えません。
どこの診療所に行っても、いつも待合室は患者さんでいっぱいです。
これではなかなか気軽に病院などを利用することは出来ません。

ですので、「もっと市販薬を利用しましょう」という流れになってくれば、薬に対する知識や情報も増えてくるはずです。
市販薬などで治療できる人が病院に行かなくなれば、本当に医者の対応が必要な人にとってもメリットになるわけです。

③ マイナンバーの普及

個人的にはこの思惑が一番強いような気がします。

政府的にはマイナンバー制度を普及させたいと思っています。
先日も厚生労働省が健康保険証をIDカード化してマイナンバーカードの機能を附帯する方針を発表しました。

例えば、この新・医療費控除の適用を受けるために、薬局で市販薬を購入した際にマイナンバーIDで購入履歴を管理するとしたらどうでしょう。

今のドラッグストアはクスリだけでなく食品や日用雑貨まで売っています。
ですから薬局の領収書だけでは実際に治療薬を買ったかどうかは判別しにくいのが現状です。
そこで治療薬を購入の際は、マイナンバーカードなどを提示して治療薬購入の履歴をIDチップに記録させます。
その記録情報をもとに新・医療費控除を受けさせるわけです。

少しでも税金を安くしたい一般の人はマイナンバーカードを持つようになるでしょう。
マイナンバーカードの導入にインセンティブ(誘因)を付けてあげることで、カードの普及も進むという流れです。

「マイナンバーカードを持っていてもメリットが無い」

そう思っている人たちは非常に多い。
政府は何とかしてカードを持つことのメリットを提案したいのです。

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まとめ

そうは言ってもこの制度を進めるためには非常に課題も多いです。

そもそも今まで確定申告していなかった人が新・医療費控除で申告するとすれば、間違いなく税務署はパンクします。
(もちろん税理士にもシワヨセ~がくるでしょう・・・(´-ω-`)フゥ)

今の制度の医療費控除ですら、正直言って医療費の領収書をチェックできているのか疑問です。
(ちなみに税理士業界では医療費控除を廃止して欲しいというのが本音です)

国民が健康になって病院も市販薬も利用しなくなるのが一番良い解決策だと思うのですが・・・(*´з`)ブゥ

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ABOUTこの記事をかいた人

すずき会計代表 税理士 行政書士 小田原・湘南地域を中心に地域密着で中小企業をサポート。 「走る税理士」としてトレイルランニングで百名山制覇に挑戦中! 相続や事業承継などに特化した「小田原相続サポートセンター」や起業家を支援する「小田原会社設立開業サポートセンター」などを運営している。