タワーマンション節税に国税庁が「待った!」

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相続税の少なくする方法(節税方法)の一つに「タワーマンションによる節税」というものがあります。
一般の庶民にはあまり縁のない方法なのですが、お金に余裕のある富裕層を中心に注目を集めていました。

「実際の市場での価格」と「相続税を計算する際の評価額」との違いにより大幅に相続税を減らすことが可能なスキーム。

この節税方法に対して国税庁がメスを入れそうです!

国税も見過ごせなかった富裕層の相続税対策

今朝の日本経済新聞に国税庁がタワーマンションを使った相続税の節税について監視を強化する方向だという記事が載っていました。

国税庁が全国の国税局に対し、タワーマンションを使った相続税対策への監視を強化するよう指示していたことが2日、分かった。
相続税評価額を低く抑える手法として人気を集めていたが、行きすぎた節税策と判断されれば、今後は相続税が追徴課税される。

マンションの相続税評価額(土地)は、敷地全体の評価額に、その部屋の持ち分割合をかけて算出する。
高層マンションは部屋数が多いため、1戸あたりの持ち分が小さくなり、評価額を低く抑える効果がある。
同じ広さなら高層階でも低層階でも評価額が変わらない。
このため、より市場価格の高い高層階の物件を購入し、相続後に売却することで、現金を相続した場合などに比べ相続税を大幅に抑制できるとされる。

特に今年1月の税制改正で、相続税の最高税率が50%から55%に引き上げられ、財産額から差し引ける非課税枠(基礎控除)が4割縮小したことで、税負担を軽くしたい富裕層を中心にタワーマンションを購入する動きが広がっている。

しかし、国税庁は「富裕層にしか活用できない節税方法であり、税負担の公平を著しく害する恐れがある」として、行きすぎた節税行為には相続税を追徴課税する。

相続の直前に被相続人名義で購入されたタワーマンションが、相続人により短期間で売却され、売買価格と相続税評価額との間に著しい差が生じたケースなどが追徴課税の対象になるとみられる。
ただ、国税庁はどのようなケースが対象になるかを明らかにしていない。

不動産市場に詳しい東京カンテイの井出武・上席主任研究員は「急に課税が強化されれば、納税者や不動産業界に混乱が生じかねない。国税庁は不適当とする基準を公表し、透明性を担保すべきだ」としている。

(2015年11月3日 日本経済新聞より)

タワーマンションによる節税、略して「タワマン節税」と呼んだりするのですが、あまりに行き過ぎた節税スキームを当局も見過ごすわけにいかなかったのでしょうね。

タワマン節税とは?

そもそも「タワマン節税」とはどういったものなのでしょうか。

タワーマンションとは建築基準法でいうと超高層建物という定義で表現されます。
高さは57m以上、階数にするとだいたい17階建て以上のマンションがタワーマンションと定義されるそうです。

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神奈川県では武蔵小杉にあるパークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワーが一番高いマンション。
200mオーバー、階数も59階あり日本の中でも2番目に高いマンションです。

もちろんこういったマンションで人気があるのは、より高い階にある部屋。
東京タワーの展望台よりも高い階から見渡す景色はサイコーでしょうね。

市場価格は高層階の方が高い

ですので、たとえ同じマンションであっても下層階にある部屋と上層階にある部屋とでは値段も違います。
例えば先ほどお話したパークシティ武蔵小杉では低層階の坪単価は270万円ほどですが、高層階の坪単価は380万円ほど。
約1.5倍ほどの差があります。

同じマンションであっても、市場価格には大きな差があるのです。

相続税評価はどちらも同じ

それでは相続税における評価額はどうでしょうか。

相続税において建物の評価は、固定資産税を計算する際に用いる「固定資産税評価額」を基準にします。
固定資産税評価額は、建物の構造や設備、広さや資材などによって金額を定めていきます。
建物の構造に基づいて評価を行いますので、同じ作り方、同じ広さであれば基本的に評価額は同じになります。

ですので同じ構造と広さであれば、1階であっても59階であっても評価額は同じです

例えば、同じような間取りのマンションがあったとします。
1階の部屋は6,000万円、59階の部屋は10,000円で販売されていたとします。
(今回は土地の評価は省略します)
固定資産税評価額は、だいたい4,000万円程度になりますがこれは1階でも59階でも同じ。

仮に購入後に相続が発生して税率が50%だったとしたら、タワーマンションを購入することで3,000万円も税金を少なくすることができます。

売却時には高層階の方が有利

しかも高層マンションの高層階は中古市場でもかなり人気があります。
ですので購入時からほとんど変わらない価格で売買することも出来ます。
ですので相続税の申告が終わってひと段落してからタワーマンションを売却すれば、再び現金として手元に戻ってくるわけです。

これが「タワマン節税」と呼ばれるスキームです。
(「土地の部分が少ない」、「賃貸借を利用」など他にも理由がありますが、タワマン節税の一番のポイントは「高層階」の活用です)

タワマン節税に「待った!」

ただ、このスキームについて国税も黙ってはいません。

このスキームを使ったタワマン節税が、節税ではなくて「租税回避」として認められなかったケースがあります。

【平成23年国税不服審判所の事例】
被相続人は相続が発生する直前に高層階マンションを約3億円で購入。
(ただ既に入院しており自分自身の意思能力は無かった)

購入後数ヶ月後に死亡、タワマン評価で相続税を申告。
(3億円のマンションは約6千万円で評価。)

相続税の申告後、すぐにマンションを売却。ほぼ購入時と同じ3億円で売却できた。

(国税不服審判所の判断)
タワーマンションの相続税の評価は、購入価格である約3億円で申告するべきであるとした。

(理由)
▼マンションの購入は明らかに相続税の節税が目的。
▼マンションを購入の翌日(相続が発生する前)から不動産業者に売却を依頼していた。

法律文章的にはOKでも、このように行き過ぎたスキームは認められないとした事例です。

この事例はちょっと極端かもしれませんが、今後はこの判断が基準にされるかも。
例えば相続開始直近に購入した不動産については、従来の相続税評価額ではなく「購入価額×○○%で評価しなさい」というようになるかもしれませんね。

行き過ぎたスキームはチェックが厳しくなる

29ILAE26今後、どのようなカタチで国税側がチェックしてくるかはまだ分かりません。
ただ、富裕層に対する課税を強化していくという方向性は間違いないでしょう。

明らかに行き過ぎた節税方法は、税務署に否認される可能性が非常に大きいです。
一部の情報などに惑わされることなく、実態に合わせた対策を行っていくことが一番の相続税対策となります。

今後も相続税評価と市場価格との差額を利用したスキームが出てくるでしょう。
ただ結局は国税とのイタチゴッコです。

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すずき会計代表 税理士 行政書士 小田原・湘南地域を中心に地域密着で中小企業をサポート。 「走る税理士」としてトレイルランニングで百名山制覇に挑戦中! 相続や事業承継などに特化した「小田原相続サポートセンター」や起業家を支援する「小田原会社設立開業サポートセンター」などを運営している。

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